以前は、「畳床=稲わら(本畳床)」と誰もがお分かりだったと思いますが、最近では、様々な素材の畳床が作られ、その畳床が殆どの住宅メーカーで指定素材に選ばれていること等から、本畳床以外の畳床が約90%を占めるようになっています。特に、新築や建替えでは本畳床はお客様の部屋に届きにくくなっています。
多様な畳床が開発されるようになり、全て稲わらで作られた畳床を「本畳床」と呼ぶようになっています。
1.本畳床
- 製造(構造)
- 厳選した稲わらを、縦横に4層又は6層に約40cmの厚さに積み重ね5cm程に圧縮し機械で縫い上げた畳床(昭和10〜20年頃まで手縫いで畳床を製造していました)。
JIS規格により、積み重ねられた稲わらの層の段数と縫糸の間隔(写真355KB)、重量で特級品から3級品の4段階に区分(市場では4級品まで流通しています)- 特徴
- 天然素材で自然に還すことが出来る。
- 弾力性に優れる。
- 耐久性に優れる。
- 吸放湿性に優れる。
- 断熱・保温性に優れる。
- 難燃性に優れる。
- 遮音・吸音性に優れる。
- 補修が容易。
- 重く扱いにくい。
- 湿度の管理が必要。
- 比較的コストが高い。
写真上
仕上がり2寸の本畳床。幾つかの層に分かれているのが見れると思います。この畳床は裏面に茣蓙(写真383KB)を張った特注品です。
縫糸はビニロン糸と、PP糸(ポリプロピレン糸)が多く使われていますが、PP糸は光沢があり、滑りやすく伸縮性がないので、使用年数とともに切り口から緩み端口が崩れやすい。ビニロン糸は縫糸に適しているが高価。どちらの糸もリサイクル性に課題がある。
写真左
仕上がり1寸の本畳床。薄くしたことで性能面では2寸の畳床に劣りますが、フローリングのお部屋や板廊下の段差と冷たさの解消等にご注文いただき、喜ばれています。
2.ワラサンド畳床
- 製造(構造)
- 3層構造の畳床。稲わらを上下層に、中層にポリスチレンフォーム板(又はインシュレーションボード板)を挟んだもの。
中層に挟む素材と厚さによりJIS規格で区分。
最近、中層の素材をコルクや炭等に変えた畳床もあります。炭の効能なども期待できますが、耐久性や弾力性など疑問が残ります。- 特徴
- 比較的コストが安い。
- 軽量である。
- 本畳床に近い感触。
- 耐久性に劣る。
- 吸放湿性にやや劣る。
- 弾力性にやや劣る。
- リサイクルに難点がある。
- 上質な畳表をつけられない。
右写真
仕上がり2寸のワラサンド畳床。中層に8分(約24mm)のポリスチレンフォーム板が挟んである。
復元力のない素材なので、出入り口の畳など足の行く場所は潰れやすい。
縫糸はPP糸(ポリプロピレン糸)を使用。光沢があり、滑りやすく伸縮性がないので、使用年数とともに切り口から緩み端口が崩れやすい。
3.建材(化学)畳床
- 製造(構造)
- 1〜3層構造で稲わらを全く使わない畳床。ポリスチレンフォーム板に薄いベニヤ板を張ったもの。インシュレーションボード板を重ねたもの。
上記フォーム板とボード板のそれぞれ厚さの異なる素材を組み合わせた10〜55mmの畳床。- 特徴
- 工業製品で品質が均一。
- 比較的コストが安い。
- ポリスチレンフォーム板は耐湿性に優れる。
- ポリスチレンフォーム板は非常に軽量。
- 弾力性に劣る。
- 耐久性に劣る。
- 吸放湿性に劣る。
- 遮音・吸音性に劣る。
- 補修性が非常に劣る。
- 難燃性に劣る(ポリスチレンフォーム板)。
- リサイクルに難点がある。
- 上質な畳表をつけられない。
写真上
インシュレーションボード・ポリスチレンフォーム畳床。
3層で、中層にポリスチレンフォーム板を挟んで軽くした畳床、厚さの違う畳床等があります。
現在主流の畳床。
写真左上
インシュレーションボード畳床。
3層でボードのみ。15mm2枚と10mm1枚を重ねてあります。木質性繊維を成型してあるので、針を刺す4辺が特に崩れやすく補修が難しい。湿気によりコシがなくなりやすい。比較的重い。
写真左下
ポリスチレンフォーム畳床。
荷重がかかると潰れてしまうので、厚さ3mmのベニヤ板を載せクッション材のシートを表面に敷いてあります。框部分の裏側には表を巻き込みステープルで留める為のベニヤ板を入れてあります。バリアフリーを謳ったマンションなどに多く使われています。
吸放湿性(50KB)
本畳床断面(54KB)
燃焼実験(49KB)
遮音性(53KB)
健康(50KB)
弾力実験(56KB)資料;宮城県畳床工業組合
『畳』
なぜ今、本畳床?本来の『畳』には、畳表の清涼感と畳床の弾力性により作り出せる空間演出というものがあります。畳の上に一歩踏み込んだ瞬間に、目からは「青みかかった銀白色」、鼻からは「自然な草の香り」、そして足からは「優しくしっかりとした感触」が伝わってくる。そんな『畳』に日常はごろりと寝転ぶ“リラックスした空間”を、時には大事なお客様を迎える“心ひきしまる空間”を作り出すことが出来るのです。
適当な芯材に畳表を縫いつけても『畳』にはなりません。本畳床に畳表を縫いつけて初めて『畳』になるのです。本畳床には幾つかの欠点がありますが、生活を楽しむことの出来る人であれば克服できないことは決してないはずです。
- 本来の『畳』をお客様にお届けしたい。
- リサイクルも大事ですが、まず「土に還せる天然の素材」を使い、次の世代に不必要なゴミを残さない。
- 米を主食とする国「日本」の「食と住」が結びついた大切な文化である。
“稲わら”は稲作の副産物です。- 新畳は決して安くはないが、長い目で見れば気持ちよく使え経済的です。
- 手間がかかるがそれだけ綺麗に仕上がり長持ちする。
(+α職人としてやりがいのある素材でもある)